今回はワイヤーブラシの毛材に使われる金属線(ワイヤー線)を少し詳しく紹介します。ワイヤーブラシは金属加工後のバリ取りや金属表面の錆び落とし、スケール除去、研磨・研削などに、また、断熱や防熱、シールなど様々な用途に使われます。
硬鋼線(SW-A,SW-B,SW-C)
- 冷間引延(伸線)により硬度を出したワイヤー線で広く工業用ブラシに使用されている。
- 反面、錆びや連続使用による金属疲労が生じ、折損(毛折れ)が発生しやすい材料でもある。
- 炭素(C)含有量によって種類分けされる。
40C(カーボン)硬鋼線=SW-A → 硬鋼線材SWRH42A or B(※)から伸線加工。
60C(カーボン)硬鋼線=SW-B → 硬鋼線材SWRH62A or B(※)から伸線加工。
70C(カーボン)硬鋼線=SW-C → 硬鋼線材SWRH72A or B(※)から伸線加工。
80C(カーボン)硬鋼線=SW-C → 硬鋼線材SWRH82A or B(※)から伸線加工。
※マンガンの含有量の違いでAまたはBに分類。弊社ワイヤーブラシに使用されるのはAである。
- 炭素含有量が高いほど線材の硬度も上がる。
- 線径:φ0.1~φ1.5mm ただし、φ0.1mmは40C硬鋼線のみ。
- 波付け(クリンプ)加工を施して使用する。
メッキ鋼線
- 硬鋼線に真鍮メッキまたは亜鉛メッキを施したワイヤー線。
- メッキ加工により線材の強度が増し、折損も比較的少なくなることが特徴。
- メッキ加工の防錆効果によりメッキ無しの硬鋼線より錆びにくい。
- 硬鋼線材:SWRH62A,SWRH72A,SWRH82Aにメッキ加工。
- 線径:φ0.1~φ0.5mm
- 波付け(クリンプ)加工を施して使用する。
メッキ鋼撚線
- 真鍮メッキ鋼線を複数本撚り上げ、波付け加工したワイヤー線。
- 撚線加工をすることで更に強い反発力(毛腰)が得られる。また、線材が折損し難くなる。
- 硬鋼線材の種類:SWRH72AまたはSWRH82A
- 線径(単線) :φ0.25,φ0.3,φ0.38(mm)
- 撚り加工の本数:5本~7本
- 波付け(クリンプ)加工を施して使用する。
ラッピングワイヤー
- 真鍮メッキ鋼線を複数本束ね、周囲を細い真鍮メッキ鋼線で巻き付けたワイヤー線。
- 複数本束ねることでワイヤー線の中で最も反発力(毛腰)が強い。
- 硬鋼線材の種類:SWRH82A
- 線径(単線) :φ0.175(mm)
ピアノ線
- 硬鋼線の類であるが、一般硬鋼線と比べ含有不純物が少ない高級バネ用ワイヤー線。
- 炭素含有量は80C以上。高い硬度を持つ。
- 硬鋼線と同じく連続使用による金属疲労が生じ、折損(毛折れ)が発生しやすい材料。
- 線径:φ0.14(mm)
ステンレス鋼線(SUS304,SUS316,SUS310)
- 硬鋼線に次いで広く工業用ブラシに使用されているワイヤー線。
- 熱に強く、また酸やアルカリに強いなど耐腐食性にも優れるのが特徴。
- 硬鋼線に比べ錆が発生せず折損も少ない。
- SUS304はブラシ材に加工する過程で若干の磁性を帯びる。
- SUS316は耐酸性、耐食性がSUS304よりも更に良く、磁性を有しない。
- SUS310は耐熱性に優れる。
- 線径:φ0.024~0.12(mm)
- 波付け(クリンプ)加工を施して使用する。
真鍮線(BS)
- 銅と亜鉛の合金で黄銅線とも呼ばれる。
- 硬鋼線やステンレス鋼線よりも柔軟で当たりがソフトなブラシになる。
- ただし、ブラシとして使用すると対象物に色(真鍮色)が付着する場合がある。
- 酸やアルカリには弱いが大気中では腐食せず錆びない。
- 線径φ0.06~φ0.6(mm)
- 波付け(クリンプ)加工を施して使用する。
燐青銅線(PB)
- 主成分の銅に錫を3~9%加え、リン酸で酸化銅を脱酸した三元合金。
- 酸化銅を取り除くことで強度が向上。
- バネ性や耐摩耗性に優れる。
- 導電性、熱伝導度が高く、非磁性でもある。
- 化学的腐食に強い。
- 線径:φ0.06~φ0.3(mm)
- 波付け(クリンプ)加工を施して使用する。
弊社では手作業で使用する小さなブラシから製鉄所向けの1トンを超えるような大型のブラシロールまで、あらゆるワイヤーブラシの製作が可能です。