ブラシの用途・機能

ブラシは、平滑面のみならず、曲面・凹凸、線材、チューブや開孔などの形状にフィットし、適度な弾力で異物や汚れを除去します。ほうきのように掃く機能（路面清掃）、ハケのように払う機能（くずとり・切り屑や削りカス除去）、スポンジのように洗う機能（ビンの洗浄）、タワシのようにこする機能、布のように拭く・拭う機能など、毛材の密度や硬さで調整が可能。乾式・湿式のいずれの方法にも対応できるだけでなく、耐熱・耐酸・耐アルカリ・耐薬品などの性能を付加して、洗浄方法や母材の性状に最適なブラシをご提案することができます。また、精密洗浄用ブラシ製作の技術もあります。

ブラシによる研磨・研削のメリットは母材への追従性にあります。面だけでなく角や端部にもフィットし、細い線材の周囲や円筒内部などヤスリや砥石では届きにくい部分にまで、磨く・削る機能を行き届かせて均一に平滑化します。研磨ブラシの多くは、砥粒（コンパウンド）入り毛材を使って作ります。毛の素材と植毛方法・密度によって研磨の強弱や研磨跡（ブラシマーク）の低減が可能。バフ研磨のようにツヤを出す仕上げや、湿式研磨・乾式研磨にも対応できます。

金属や樹脂・エンプラの切削・せん断・鋳造・射出成型などの工程で発生するバリは、品質面からも作業者の安全面からも必ず除去すべきものですが、非常に細かく手間のかかる作業でもあります。ブラシは、エッジやスリット、ネジなどの溝、穴の内径・交差穴のバリ取り・ケバ取りに効果を発揮します。回転させた砥粒入りブラシの先端で擦るように除去するため、砥石やカッター・ヤスリ・研磨ベルト・研磨ディスクなどのツールと比較すると、当たりが柔らかく繊細で、二次バリの発生を抑えるメリットがあります。耐久性の高い毛材を使用した、大型機械用・ハンドツール用ブラシも製造しています。

鋼材の鉄酸化物（スケール）や熱間加工・圧延で生じる黒皮と呼ばれる酸化皮膜（ミルスケール・黒錆）の剥離などを行うのが、金属線や砥粒入りのブラシです。専用機械用の仕様、対象物の材料や汚れの種類により適切な毛材・形状をご提案します。

半導体やFPD（液晶・有機ELなどのフラットパネルディスプレイ）・電子部品・精密機器の製造設備機器に付着する微細な汚染物の除去に、当社の高精度なブラシが使われ、残留物やコンタミの混入を防いでいます。また医療機器や精密測定装置の清掃・洗浄に使う繊細なブラシも製造してきた実績があります。デリケートな対象物を傷つけないため、高い精度と洗浄度をクリアしたブラシ製造を行うことも可能です。

半導体の材料となるシリコンインゴットは、スライス前に端部（インゴット表面）を平滑にする目的で、ダイヤモンド砥粒入りの精密なブラシによって精密研磨されます。

ブラシは、遮蔽（しゃへい）・遮断の用途でもよく使われています。建築物や工業用設備機器の断熱・遮熱・防臭・防塵・防風・遮光・防水、あるいは鳥や虫などの侵入防止など、目的は多様。可動部・摺動部といった変化する隙間、複雑な形状にも柔軟に追従し、異物の侵入や飛散・拡散をブロックします。また、シールド掘進機後部の止水機能も、ブラシが担っています。ブラシの中にグリスを浸透させて粘土質の壁を作り浸水を防ぐ機構で、地下掘削工事の安全を守ります。

ブラシは根菜などについた泥を野菜を傷めずに払い落とすのに最適です。また、ブラシの製法を応用してマット状に加工すると、毛倒れしない丈夫な泥落としマットになります。ブラシマットは、農業や工事などの屋外作業・スポーツなどで靴裏についた重い泥をしっかりこそぎ落とします。

ブラシの追従性を活かし、毛材の毛丈や密度によって弾力性・接触面積を調整することで、優れた緩衝材として用いることができます。製品の組立て作業台や作物を一時保管・搬送するためのマット、デリケートな製品をまとめて移動させるワイパーほか、昭和工業では目的と用途に応じたオリジナルの設計が可能です。

毛材に導電性繊維を用いることで、静電気除去や除電効果のあるブラシが作れます。液晶パネルや医療機器、精密機器、紙やフィルムなどホコリの付着を防ぎたいもの、半導体・電子機器など電気の影響によって破損や不良が生じるもの、高電圧の機器、可燃性製品を扱う現場などに最適です。

明治初期、ブラシは「洋式刷毛」(ようしきはけ）と呼ばれていました。ハケは筆に比べて広い面積を塗るために利用されるもの。ブラシやブラシロールも、様々な薬剤・液体や塗料の塗布に用いられています。塗布する対象物や塗るもの性状によって、耐薬品性・耐アルカリ性・耐酸性などを付加することも可能です。